2020(令和02)年の、 レジンでのハウジング部品作りの記録。


2020/10~11
ダイバーならこんなケースを見たことがあるはずだ。

俗に「ハウジング」と呼ばれている、コンデジの防水ケースだ。
正式名称は各メーカーによって異なる。

コンデジをこれに入れると、水深約40mまで撮影できるようになる。



【余談】
以前は「水中写真」っていうと専門的な分野だったが、
コンデジとハウジングのお陰で、初心者のダイバーでも
気軽に水中写真が撮れるようになったね。

今では、中国製の格安アクションカメラに、
たいてい付属してくるハウジングを付けて潜るダイバーもフツーに見るようになった
(俺もやるけど、画質は今イチどころか今ニだな~(苦笑)。
やっぱGoProにはかなわないね。)。
 
 
旧いハウジングを長く使っていると、問題が発生する。

コンデジの、「」の部分のスライド式の「モードスイッチ」を操作するために、
ハウジング側にゴム部品(以下「部品」)が取り付けられているのだが、
この部品が経年劣化でボロボロになってしまうのだ。

メーカーの修理に出すと、料金が高い(たかだか部品を取り付けるだけだ。)上に、
それほど長くない期間で「修理不能」の扱いになってしまう。

このモードスイッチの操作ができないと、
水中で撮影した画像がどうだったか、撮り直した方がいいのか、
などの判断ができなくなってしまい、ヒジョーに不便なのだ。
 
 
これまでは苦肉の策で、この写真のように、
ホームセンターで売っているゴムの塊から
現物合わせでカッターで切り出して取り付けていた。
 
 
切り出したゴムを、ジャンクのコンデジから外した極小ネジを使って固定している。

ネジを通しているところは、本来は部品の「脚」が通る部分なので、
最初から穴が開いていて都合がいい。

この方法でとりあえずは使えていたのだが、
そのうち、どういうタイミングかで、水中で操作していると、
この部品と、コンデジのモードスイッチがとが滑ってしまい、
モードスイッチを操作できなくなることが時々あって、困っていた。
 
 
そこで目を付けたのが、部品が劣化していない同じ型番のハウジングを
ヤフオク!で探すことだ。

しかし、俺のハウジングの型番はさっぱり出品されない…。

ならば、同じようなデザインのカメラ用に作られた他の型番のハウジングから
部品の流用ができないか、と考えた。

出品ページの写真を丹念に見て「これは使えるかも」というハウジングをポチしても失敗だった、
という経験とを何回か繰り返した後(「勉強代」は数千円かかった…。)、
ついに同じカタチの部品(写真)を使うハウジングを見つけた。

しかし、「カタチ」は同じなのだが、残念ながら高さが合わない…。
俺のタイプには低すぎるのだ。

ちょうど、もう赤矢印の幅ぐらい高ければ、俺のハウジングに使えるのに…。

そして思いついたのが、レジンを使った自作だ。
レジンを使った部品作りは、数年前に全く別の分野の器械で経験済みなので、
またやってみよう、ということになった。

※カメラのちょっとのデザインの違いのために、
それに合わせてハウジングを作ることになるカメラメーカーは
さぞかしめんどーなんだろうな~、と思うよ(笑)。
 
 
元の部品のレプリカを複数作り、
それらを切断加工して必要な「高さ」を稼いだ「原版」を作ることにする。

まずはレプリカ作りだ。

元の部品に型取り樹脂を流し込む。

使用したプリンカップや「わっか」は、
以前の部品作りで使用し、取っておいた物。

また役立つときが来るとは!
 
 
2液タイプの型取り樹脂を流し込み、硬化を待つ。
この型取り樹脂も以前使用した物。

前回の使用から数年が経っているので使えるかどうか不安だったが
問題なく使えてよかった。

俺が使った型取り樹脂は、取説では完全硬化まで24時間ということだが、
実際は一晩置いたらしっかり固まった。

なお「硬化」といっても、カチンコチンになるのではなく、弾力を持って固まる。



【余談】
型取り樹脂の元の色は白。
今回は緑色の着色剤を混ぜてある。
 
 
硬化後、カップから「わっか」を取り、
ひっくり返してみたもの。
 
 
元の部品は簡単に取り出せる。

取り出したあとのこの中に、レジンを注ぐとコピーができる。
 
 
以前の作成で使用したレジンはちょっと特殊な2液タイプのもので、
今回の部品作りには、仕上がりの違いから使えない。

そこで、今回の部品作りに合うレジンをネットでもいろいろと見てみたんだけどよく分からず、
とりあえず試作用として100均の「Seria」でいろんな色のを買ってきた
(結局は試作のつもりが本番になっちゃったけど。)。

ここでちょっと注意しないといけないのは、
レジンにはいくつかのシリーズあるのだが、
基本的に「どの光源でも硬化する」ものを選ぶこと。

そのリクツは書くと長くなるので、ネットでググってみてね。
 
 
成型樹脂の穴ボコに100均の「Seria」で買ってきたレジンを流し込む。
 
 
おもしろがって、いろんな色でいくつも作った。

この時点で問題になったのは、「脚」の部分がうまくできていないものが結構多いことだった。

これはつまり、レジンを成型樹脂に流し込むときに、
空気(気泡)を徹底して取り除かないといけない、ということだ。

今回の部品には2本の「脚」があり、特にこの「脚」の膨らみが重要な役目を果たす。

この「脚」の膨らみが台となる部品の穴を通過することでロックするようにしっかり取り付けられるため、
この「脚」の部分を特に丁寧に作成しないと、不良品になってしまう。

レジンを注いだ成型樹脂の「脚」の部分を思いっきりギュッと押して空気を押し出したり、
爪楊枝を使って気泡を潰す。

ありがたいのは、UVで硬化するタイプは、2液レジンのように刻一刻と硬化することがないということだ。

太陽やUVライトに当てない限りすぐには硬化しないので、ゆっくり落ち着いて作業ができる。
 
 
いくつも作ったうちからデキのいい個体を加工する。

切断する位置を変えて、
①:アタマ(カメラのモードスイッチに当たる部分)+(高くしたい)幅
のものと、
②:(高くしたい)幅+脚
の2つを作る。
 
 
これが、
:アタマ(カメラのモードスイッチに当たる部分)+(高くしたい)幅 のものと、
:(高くしたい)幅+脚 のもの。

のうっすら赤い部分は、凹部を埋めるためにわざと赤のレジンを使ってみたもの。

このを接着すれば、「(高くしたい)幅」の分がプラスされるんだね。

接着後、微妙な凸凹をヤスリで成形して仕上げれば、やっと原版ができあがる。

ちなみに、の接着にはやはりレジンを使う。
2個の合わせ目にレジンを薄く塗って硬化させると、バッチシくっつく。
 
 
左が完成した原版。

右の本来の部品に比べてちゃんと「高く」なっているでしょ(笑)。

なお、原版の「脚」の根元近くに気泡が入ってしまっているが、
表面に出てるわけではないし、今回の場合見た目は関係ないので、問題なし。
 
 
では、次はこの原版の型取りをする。

「この原版をハウジングに付けちゃえばいいんじゃないの」、と思うかもしれないが、
弾力がある状態のもので完成させないといけないので、まだ作業が残っているのだ。

この原版はカチンコチンに硬くできているため、
仮にこのまま使うとしても、コンデジの硬いモードスイッチにカツンと当たることは避けたいし、
そもそも「脚」の膨らみの部分が、取り付ける「台」の穴を通過してくれないのだ。
 
 
本来の部品(黒いヤツ)の時と同じように、成形樹脂で型取りした。

今度はピンクで成形樹脂を着色した。

※この写真はストロボがかなり効いてしまっている。
しかし、表現したい場所(穴ボコ)がきれいに撮れているのでこの写真を採用した。
 
 
 
 弾力を持たせるために、ソフトタイプのレジンで作成してみようと思う。

Amazonで500円(25g)のをポチした。

※最初は「ダイソー」のソフトタイプを使ってみたんだけど、
さっぱり硬化しなかったので、別な物を探したんだ。
 
 
ひとまず完成!

ところが…、ハウジングの部品としてはグニャグニャしすぎてちょっと柔らかすぎた。
そこで…
 
 
これまで使ってきた「Seria」のハードタイプのレジンと混ぜてみることにした。

100均の紙コップを切って皿のようにし、
そこにハードタイプとソフトタイプを目分量でとりあえず1:1ぐらいで出してみる。

写真は、ソフトタイプのレジンを出した左側に、
紫色のハードタイプのを出して、かんます前のもの。
 ハードとソフトの「合わせ目」が少しずつジワーッと合体する。

きれいなグラデーションが生まれる。

そして、気泡が入らないように注意しながら、よぉ~くかんます。
 
 
よぉ~くかんましたら、成形樹脂にレジンを流し込む。
そして、成形樹脂の穴ボコの中の空気を徹底して取り除く。

手で、成形樹脂の端っこの部分を押すと気泡が出てくるので、これを爪楊枝などで潰す。

この写真はブレているが、何しろ左手でかなり思いっきり成形樹脂を押さえながら、
右手で写真を撮っているので、プルプル震えるからなんだね(笑)。
 
 
ここにも気泡がある。

コツが段々と分かってきたのだが、成形樹脂の穴ボコに一気に全量を満たす必要はないのだ。

気泡が入らないように注意しながら、少しずつ硬化させることを繰り返しても境目は分からず、
きれいに仕上がるんだね。
 
 
ここにも気泡がある。

UVライトなどを当てない限り簡単には硬化しないので、
潰しにくい小さな気泡は、少し時間をおいて上に浮いてくるまで待っていても、取り除くことができた。
 
 
作成したかった部品がやっと完成した。

結果論だが、ハードとソフトをテキトーに1:1で混合してみたが、これがなかなかによかった。

ただこれは、この部品を作る場合のいい比率ということであり、
他の作業でもこの比率がBESTなのかどうかは分からないよ。

今回もいろんな色で作ってみた。

今回作成した部品は特に酷使する部品ではないが、
レジン部品の耐久性がどの程度なのかは分からないので、予備として多めに作ってみた。

ちなみに、真ん中の透明なのはソフトタイプだけで作成したちょっと柔らかすぎたもの。

なお、作成直後はちょっとベタ付き感があるが、太陽光に数日さらせば収まる。
 
 
【参考】

気泡を無視して硬化させるとこのようになる。

まあ、この部分にレジンを垂らしてすぐ固めることを繰り返して、
ちょっと盛り上がるぐらいにまでしてからナイフや彫刻刀で削って成形してもいいけど、
ウツクシクないよね…。
 
 
ところで、この部品の作成途中から、USBから電源を取るUVのLEDライトを使っていた。

Amazonで550円の中国製なので、どれだけ使えるのかポチする前から懐疑的だったが、
これが意外に威力を発揮してくれた。

それまでは太陽光かピンポイントで照らす手持ち式のLEDのUVライトを使っていたのだが、
これなら脚を立てたライトの下にレジンを置いて、スイッチを入れるだけでよい。

俺がポチしたタイプは、折りたたみテーブルのようなイメージだ。
ライトは最長で3分間連続で点く。

照射後に爪楊枝の先でレジンをつついてみれば大体の硬化具合が分かる。
硬化が足りないと感じる場合は繰り返して照射すればいい。
 
 
完成した部品。

ここまで大きく撮ると細かな気泡などのアラが目立つが、
ぱっと見にはきれいなサファイヤ色だよ。

いよいよハウジングに取り付けてみる。
 
 
バッチシだね!

この部品が完成したお陰で、このハウジングの機能が完全に復活した。

2008(平成20)年製のコンデジだが、
単3電池を使用するタイプだし、マクロが1cmまで寄れるしと何かと便利なので、
今後も大事に使いたい。

おしまい。